認知行動療法:認知療法とは

前のページで認知行動療法の概要を説明しましたが、「認知行動療法」とは「認知療法」と「行動療法」をまとめた言葉で、「認知療法」とは物事の考え方や捉え方を変えて不安や恐怖を感じないようにする治療法で、「行動療法」は「暴露療法」とも呼ばれ、苦手な場面を繰り返し経験することで慣れ、行動範囲を広げていく治療法です。

ではまず「認知療法」から具体的に解説していきます。

パニック障害を患っている方は「パニック発作が起きるかもしれない」という「予期不安」と、「パニック発作が起きるかもしれないから○○に行けない」という「広場恐怖」を抱えている場合がほとんどです。

特に逃げ場の無い状況に極めて弱く、人によって違いはありますが、「バスや電車に乗れない」「美容院に行けない」「レジに並べない」「エレベーターに乗れない」といった考えをお持ちの方が大多数を占めます。

これら状況が恐い理由はひとえに「逃げ場のない状況でパニック発作が起きたら…」というもので、そこに以下のような考えが伴います。

■逃げ場がないから気が狂ってしまうかもしれない
■死んでしまうかもしれない
■周りの人に迷惑をかけてしまうかもしれない
■恥をかいてしまう

これら予期不安はパニック障害のみならず不安障害などを抱えている方共通のもので、要は物事を悪い方悪い方に考えてしまっている証拠です。
こういったマイナス思考の考えを少しずつ変えていくのが認知療法の目的なのです。

例えば、パニック障害や不安障害の方が最も苦手だと思う「電車やバス」なら…

■調子が悪くなったら次の駅や停留所で降りればいい
■やばそうだったら、とっとと安定剤飲もう
■調子が悪くなっても、それは病気だから恥ではない
■周りの乗客が手を差し伸べてくれる
■そもそもパニック発作で死ぬことはない

…こんな感じで、マイナス思考になると悪い方向にばかり着目し、必要のない不安や恐怖を増大させてしまうのですが、少し考え方を変えるといくらでも安心できる要素が出てきたりします。

新幹線やバスツアーにでも行くのであればまだしも、各駅停車の電車や路線バスなら次に停まるまでせいぜい数分ですし、日本人の優しさは世界トップクラスで、迷惑に思う人などほとんどいませんし、当然パニック発作では人は死なない。

とはいえ私も不安障害や社会恐怖症持ちですから、これらが「口で言うのは簡単だけど…」というものである事は百も承知で、一朝一夕ではどうにもならないのは確かです。

これらはいきなり結果を求めるのではなく「徐々に、徐々に」が基本で、日によって大丈夫だったりダメだったりしますから、それこそ「3歩進んで2歩下がる」を地でいくような治療法といえますが、状況における認識を少しずつ変える事で行動範囲も少しずつ広がってきます。

もちろん「徐々に」が基本ですから、イキナリ「山手線一周してやる!」とか無茶をしては逆に悪化しかねないので止めましょう。

次のページでは具体的な認知療法の方法を見て行きましょう。

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