吐くのが恐い嘔吐恐怖症とは
自分はもちろん他人の嘔吐にも過剰な恐怖を感じる
私自身が子供の頃から苦しめられているという事もあって、若干マイナーな心の病ながらやはりこの「嘔吐恐怖症」を一番に取り上げなければならないでしょう。
嘔吐恐怖症はその名の通り吐く事に強烈な恐怖を抱き、自分はもちろん他人が吐くのを見聞きするのも恐いというもので、「気持ち悪ければ吐く」というのが当たり前の一般の方には理解できないであろう心の病です。
吐く事に強い恐怖を感じるあまり、日常生活や社会生活に下記のような悪影響を与えます。
■気持ち悪くなったら嫌なのでお腹一杯食べられない
■万が一の吐く事を考えてしまい外食ができない
■吐くかもしれないからお酒は飲まない
■誰か吐くかもしれないから居酒屋とかには行きたくない
■吐いている人や吐いた人、今にも吐きそうな人の介抱ができない
■乗り物酔いなどで吐きそうになっても逃げ場の無いので電車やバス、飛行機に乗れない
■冬は嘔吐に繋がるノロウイルスなどが恐いので人混みを避ける
■吐き気に対する恐怖で緊張し、それが原因で吐き気を誘発するという悪循環に陥る
とにかく自他問わず「嘔吐」を連想、予想させる行動は予期不安によって徹底的に回避するようになり、特に出先での吐き気や嘔吐に対して強い恐怖を感じるため家から遠く離れる事に恐怖を感じる場合もあり、旅行などが出来なくなる事もあります。
予期不安が行動範囲を狭める嘔吐恐怖症
このように「外食ができない」「公共交通機関に乗れない」といったように生活に影響を及ぼす嘔吐恐怖症ですが、実は一番憂慮しなければならないのは「吐くのでは…」「気持ち悪くなるのでは…」といった予期不安による恐怖、緊張によって引き起こされる吐き気です。
極度の緊張によって吐き気が誘引される事は、芸能人やスポーツ選手などが「緊張しすぎて吐きそうだった」という話をする事があるように一般的ですが、普通の人であれば日常生活において極度の緊張にさらされる事はまれです。
しかし「吐く事」「吐かれる事」に強い恐怖や不安を抱いている嘔吐恐怖と予期不安を持っている人にとっては、これらの強い予期不安によって極度の緊張が日常的に起こり、それによって吐き気を誘発してしまいます。
そしてその吐き気の辛い記憶によって「吐く」という事への恐怖が強まり予期不安の増大がもたらされ、より緊張や不安、恐怖が膨らみやすくなり吐き気を催してしまう…という悪循環に陥ってしまうのです。
予期不安に加え広場恐怖も重なる最悪の状況も
上でも少し触れたように嘔吐恐怖症では電車やバスといった公共の乗り物にも乗れなくなる「広場恐怖症」を伴う事が多くなります。
嘔吐や吐き気の恐怖によって予期不安を起こし、その緊張によって吐き気を催す悪循環に陥りがちな嘔吐恐怖症にとって自分の意思で乗り降りできない逃げ場のない状況というのは「気分が悪くなったらどうしよう」という不安と恐怖を増幅させます。
それが悪化してくると美容室や理容室のように勝手に動けない状況を避けるようになり、さらに悪くなるとほんの数十秒しか乗らないエレベーターすら恐怖の対象となり、レジといった行列すら怖くなります。
これら予期不安と広場恐怖を伴う点はパニック障害に酷似しており医師の診断もパニック障害や社交不安障害とされる場合も多いのですが、嘔吐恐怖症とパニック障害には大きな違いがあります。
それはパニック障害が激しい動悸や息苦しさなど生命の危険を感じる発作に恐怖を感じるのに対し、嘔吐恐怖症は嘔吐と吐き気に対する不安と恐怖に特化している事です。
ただ、嘔吐恐怖症やパニック障害に必ずといっていいほどセットになる予期不安、そして高確率で付随する広場恐怖による最悪の悪循環に陥るという点では共通しており、ゆえに治療法も非常に共通点が多くなります。
嘔吐恐怖、予期不安、広場恐怖がもたらす悪循環にはまってしまうと抜け出すのは難しく、日常生活や社会生活において著しく行動範囲が狭まってしまい最悪の場合には引きこもりになってしまう事も。
実際私もこれによって小学校の3年間を不登校、青春を謳歌するはずの18~20歳までを引きこもり生活となってしまいました。
正直ここまでなってしまうと普通の社会生活を送るのは難しいというのが本音ですが、ちゃんとした知識と対処法を取れば引きこもりを回避しそれなりの日常生活を送ることは出来ますし、上手くいけば一般の方となんら遜色ない生活も送れます。
もちろん嘔吐恐怖といっても症状の強さは様々ですから、日常生活や社会生活にまで支障が出ていない方も多くいらっしゃいますが、当サイトを見て下さっている嘔吐恐怖を調べてどうにかしたいと感じている方はおそらく日常生活にそれなりの支障が出ている方だと思います。
ですから、次のページから具体的にどうすれば嘔吐恐怖を軽減、治療できるかを色々と取り上げていきたいと思います。
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