嘔吐恐怖症の治療・抗うつ薬の効果と選び方

嘔吐恐怖症の治療は抗うつ薬と精神安定剤

一般的に知られている心の病であるうつ病やパニック障害の主な治療法は抗うつ薬などの薬物療法と、物事の捉え方を変えると同時に徐々に行動範囲を広げていく認知行動療法が主な治療法ですが、では嘔吐恐怖症の治療法はどうなのか?

パニック障害やうつ病などによく用いられる抗うつ薬であるパキシルジェイゾロフトレクサプロなどのSSRIは、確かに多くの心の病や神経症に効果を発揮しますが、嘔吐恐怖症に有効かと問われれば「一定の効果がある」と感じる一方で副作用の問題もありますから必ずしも用いるべきとは言えないのかもしれません。

抗うつ薬は不安や恐怖、緊張といったものを抑制しますから嘔吐恐怖に対してもそれなりの効果が期待できるのは間違いないと思われ、実際私は2年間ほどパキシルを服用していましたが一定の効果はあったと思います。

嘔吐恐怖症は「パニック障害の一つ」といった意見や「パニック障害と仕組みは同じ」という見方が大勢で、嘔吐恐怖症でもたらされる吐き気はパニック発作であるという考え方もできますから、パニック障害に大きな効果のあるSSRIなどの抗うつ薬が嘔吐恐怖症に効くのも当然かもしれません。

しかしSSRIなどの抗うつ薬の代表的な副作用は吐き気であり、吐く事が怖くて抗うつ薬を飲むのにその薬によって吐き気がもたらされていたら本末転倒といえます。

ただ、副作用がどの程度出るか、どういったものが出るかは個人差が大きく、実際私の場合は目に見えた副作用は無かったので2年間問題なく飲み続けられましたし、仮に副作用があっても飲み続けることによって体が慣れ副作用は弱くなってきますから、多少の副作用なら我慢して飲み続けるほうが良い結果を生む事も十分に考えられます。

嘔吐恐怖症に効果のある抗うつ薬と、その選び方

上でも書いたように嘔吐恐怖症はパニック障害に酷似しており、また不安障害のひとつでもあり予期不安と広場恐怖が付いて回る心の病でもあります。

現在主流の抗うつ薬であるジェイゾロフトレクサプロのようなSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は脳内でセロトニンの再取り込みを阻害しセロトニンの濃度を増やす効果があり、セロトニンの増加は不安や恐怖を緩和させる効果が期待できます。

嘔吐や吐き気に強烈な恐怖や不安を感じ、予期不安と広場恐怖も伴う嘔吐恐怖症はまさに「不安」と「恐怖」に支配された病とも言え、ゆえにSSRIは最適な薬と考えられます。

では具体的に嘔吐恐怖症にはどの抗うつ薬がいいのか?

これは人によって異なるので、あくまでも私の経験と一般的な傾向で書いていきます。

上記のようにSSRIは嘔吐恐怖に効果が期待できる薬であり、今現在日本で認可されているSSRIは4種類となっています。

私がこの病で精神科を受診した時はルボックスとパキシルしかなかったので、私自身はルボックス→パキシルという遍歴ですが、今現在はジェイゾロフトとレクサプロが加わって選択肢が増えています。

もし私が今この4種の中で「どれを使うか?」と問われれば、レクサプロと答えるでしょう。

SSRIの多くは選択的セロトニン再取り込み阻害薬と名乗っていてもノルアドレナリンやドーパミンの再取り込みも阻害する効果が若干ながらあり、それはノルアドレナリンやドーパミンの増加による意欲の向上や高揚感、快楽といった良い面もある一方、副作用も強める結果となります。

そんな中最新のSSRIであるレクサプロはよりセロトニンへの作用に特化しており、不安や恐怖が非常に強い嘔吐恐怖症においてそれをどれだけ緩和できるかが重要であり、意欲の向上といったものは正直どうでもいい私はレクサプロが最適と考えます。

次いで効果や副作用が比較的マイルドとされるジェイゾロフトでしょうか。

嘔吐恐怖症にSNRIやNaSSAは効くのか?

日本では圧倒的な使用率となっているSSRIですが、欧米ではサインバルタなどのSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)が広く使われており、日本でもサインバルタは認可されていますが知名度はいまいちというのが現状です。

SNRIの効果はその名の通りセロトニンとノルアドレナリンの濃度を増やす効果があり、不安や恐怖を緩和すると同時に意欲も高めるという効果が期待でき、欧米ではパニック障害の第一選択薬となっているほどです。

ただ、セロトニンとノルアドレナリンに効果がある一方で、セロトニンの吸収阻害効果はSSRIに劣る場合も多く、レクサプロに比べれば間違いなく弱いと言わざるを得ません。

一方でレメロンやリフレックスなどの新しい抗うつ薬であるNaSSAはどうなのか?

NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)はSNRIと同じくセロトニンとノルアドレナリンに作用する薬なのですが、その作用の仕方が根本から異なり、SNRIが効かない方にも効果が期待できます。

またNaSSAはSSRIやSNRIでは代表的な副作用である吐き気が出ない事も特徴で、吐き気に脅威を感じる嘔吐恐怖症にとっては最善の選択なのかもしれません。

もしレクサプロやサインバルタを使ってみて吐き気の副作用で辛い思いをしたのであればレメロンやリフレックスは次なる選択肢としておすすめできます。

薬による治療は「根本的な治療にならない」という否定的な意見もありますが、抗うつ薬によって症状を抑えることにより「これだけ行動できるんだ」という自信に繋がり、それによって行動範囲が広がりさらに自信になる…という好循環も期待できますから、抗うつ薬に吐き気の副作用があるからといってすぐに諦めず、薬を代えてもらうなどしてもらうとよいでしょう。

どうしても吐き気がある場合や、「吐き気が出るのでは?」という強い不安がある場合は抗うつ薬と一緒に吐き気止めを出してもらうのもいいでしょう。

しかし一方で森田療法に代表されるような「パニック障害などの心の病や神経症には薬を使うべきではない」という意見も一部で存在し、私自身も薬の有効性は認めるものの、薬に頼らない治療法こそ本当の意味で完治に一番近いというのも過去の経験から否定できません。

この辺の詳細は他のページで詳しく書いていくとします。

仮に薬に頼らない治療法が理想だとしてもそれには相応の時間が必要となり、社会人にとっては「とにかく症状を抑えなければならない」状況が多いのが現状です。

ですから抗うつ薬に頼りすぎず様々な治療法を組み合わせるのが理想と言えるでしょう。

辛い心の病を治す抗うつ薬

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