嘔吐恐怖症はパニック障害なのか?
嘔吐恐怖症を調べてみるとパニック障害を併発している方がとても多く、中には「嘔吐恐怖症はパニック障害の一つ」という意見も散見されるなど、嘔吐恐怖症とパニック障害は深く繋がりがある印象を受けます。
当サイトでは一応パニック障害と嘔吐恐怖症は別の病として取り扱っていますが、嘔吐恐怖症とパニック障害が同一のものなのか?それとも全く別の病なのかをハッキリさせる事によって治療の仕方にも影響が及びそうなので、ここではその辺を考察してみたいと思います。
嘔吐恐怖症の症状を振り返ってみると、吐く事や吐かれる事、嘔吐物などを極端に恐れるあまり電車やバスといった公共の交通機関に乗る事が困難になり、それ以外にも外食などの食事関連にも恐怖を抱いたり、酷くなると「吐き気が襲ってくるのではないか?」という予期不安が恐怖や緊張感といった形で現れ自ら吐き気を誘発しそれが悪循環となるもの。
体の機能としての吐き気、緊張や不安などによって誘発される吐き気問わず吐き気が襲ってきた時の恐怖や不安、緊張はかなりのもので、自分ではっきり感じ取れるほどの動悸や冷や汗は本当に辛いもので、確かにこれを「パニック発作」と定義しても不思議はありません。
一方でパニック障害の主な症状を見てみると激しい動悸、めまい、呼吸困難、意識が遠のくなどといったものが並び、ここには吐き気も加わる場合もあり、しかも予期不安によって症状が引き起こされたりする点、電車など逃げ場の無い乗り物に乗れない、人が多い所を避けるといった広場恐怖も共通しています。
しかしパニック障害の定義でよく見聞きする「死の恐怖を感じるほどの症状、死を連想させる症状」といったものは嘔吐恐怖症に当てはまるのでしょうか?
私自身子供の頃から嘔吐恐怖症に悩まされ今も完治には至っておらず、症状もそれなりに酷いものだと感じておりますが、緊張や恐怖による吐き気の誘発や吐き気への不安、恐怖、動悸は強く感じるものの、これで「死」を予感する事は一切ありません。
もちろん「いっそ死んでしまいたい」といった死への願望は除きます。
もう一点、パニック障害で吐き気が出る事が比較的多いのは確かなのですが、パニック障害を患っている方の多くは吐く事に対し過剰な恐怖や不安を持っておらず、そういった点でも嘔吐恐怖症とパニック障害は別物のような気がします。
ただしこれは嘔吐恐怖症を実際に患い長く付き合ってきた私個人が感じることであり、病気のプロである一方部外者でもある医師がどう判断するかはまた別の話で、症状が似ているから便宜上パニック障害という病名を付けているだけなのかもしれません。
しかしこの二つの病気に多くの共通点がある事は疑いようがなく、故に嘔吐恐怖症の治療にはパニック障害の治療法で一定の効果があるであろう事も想像に難くありません。
パニック障害同様、抗うつ薬や抗不安薬で不安や恐怖といった症状を抑えつつ認知行動療法(曝露療法)で行動範囲を広げ自信を付けていく…やはりこれがセオリーなのでしょうし、まったく別の考え方に基づいた薬を使わない「森田療法」を試してみるのもいいでしょう。
私の個人的な結論としては…
■嘔吐恐怖症=パニック障害ではない
■予期不安や広場恐怖といった共通点はとても多い
■パニック障害の治療法でも一定の効果は十分に見込める
…といったところでしょうか。
ただ、嘔吐恐怖症とパニック障害が同一にしろ別物にしろ、独学で森田療法を学び実践するほどの覚悟や意気込みがない限り早急に心療内科などに掛かり適切な治療を受けるべきである事は間違いありません。
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