認知行動療法:認知療法の具体的な治療方法
パニック障害の治療には欠かせない認知行動療法ですが、まず考え方や捉え方を変え予期不安などを無くしてゆく「認知療法」の具体的な手順を見てみましょう。
例えば電車に乗っていてパニック発作が起きてしまい、予期不安と広場恐怖から電車に乗るのが恐くなってしまう仕組みはこうなります。
①電車に乗っている時パニック発作が起きて激しい動悸と呼吸困難に襲われた
②電車に乗ると再びパニック発作に襲われるかもしれない(予期不安)
③逃げ場の無い電車の中でパニック発作が起きたら死んでしまうかもしれない
④電車に乗ろうとすると、心臓がドキドキし、呼吸が苦しくなったりめまいがしたりする
⑤電車に乗るのは控えたほうがいいだろう(回避行動)
①の苦痛や恐怖、不安が強すぎて、その場面とパニック発作を強く関連付けてしまい、今度電車に乗る時に②のような予期不安が引き起こされます。
予期不安によってその場面に恐怖を感じる上に、電車という逃げ場の無い密閉された空間が不安や恐怖を増幅し(③)、その不安や恐怖、緊張などから動悸や呼吸の乱れを引き起こし(④)、「電車はヤバイ」という認識を確固たるものにしてしまいます(⑤)。
パニック発作は予期不安による強い不安や恐怖でも引き起こされるので、②と③の認識を変えない限り「予期不安→発作→予期不安…」といった悪循環に陥ってしまう事から、認知療法でこれら間違った認識やマイナス思考を変え不安や恐怖、緊張を取り除く事が必要になります。
まず②は「電車=パニック発作」という感じに電車とパニック発作を完全に関連付けてしまっておりますが、実は「電車=緊張、不安、恐怖→パニック発作」であり、「電車」と「パニック発作」に直接的な関連はありません。
「電車とパニック発作の間に不安や恐怖を挟んだだけで、たいして変わらないじゃん」と感じるかもしれませんが、パニック発作の原因が「電車」ではなく「緊張や不安、恐怖」であると認識する事が大事なのです。
電車が原因だと思っていては電車に乗れるハズもありませんが、様々な方法である程度コントロールできる不安や恐怖が原因であると認識すれば「電車に乗る」という行為の受け止め方も変わってくるからです。
そして③ですが、電車という閉ざされた空間に不特定多数の見知らぬ人間が常にごく近い距離にいるという状況は、パニック障害を患っている方にはとても辛いのですが、
各駅停車の電車であれば一駅間は長くても10分程度(それでも辛いですが)ですから、「辛くなったら一駅で電車を降りればいい」「万が一発作が起きても、日本人は親切な人が多いから誰かしら手助けしてくれる」くらいのスタンスで、それでも不安であれば抗不安薬を所持したり、飲み物や飴など自分なりの緊張を和らげるものを用意して「いざとなったらこれらを使えばいい」という状態にしておけば、かなり気が楽になるはずです。
認知療法は恐怖や不安に取り付かれてしまった自分に「こういう行動は恐くないんだよ」という風に、記憶の中での不安や恐怖を取り除き、行動範囲を広げていく治療法です。
口で言うのは簡単でも実際に実践するのは結構な時間と労力を必要としますが、性格や考え方といった根本的なものを変えていく事によって辛いパニック障害を改善に向かわせ、再発を防止するのに必ず必要となるものなので、出来る限り普通の社会生活を望むのであれば積極的に取り組んでいく事をおすすめします。
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