認知行動療法:逃げ場の確保
認知行動療法…とりわけ行動療法を行うにあたり、本来であれば医師の指導のもとで行うのが理想的なのかもしれませんが、少なくとも私がかかった事のある何件かの精神科、心療内科では、あまりそういった事に積極的ではなく、薬と気持ちばかりのアドバイス程度で診察が終わってしまうという経験上、出切る事は自分でやったほうが良いかもしれません。
精神科や心療内科の医師は病気や薬の知識はあっても、実際に心の病気の辛さを味わったことのない方がほとんどでしょうから、仕方ないといえば仕方ないのかもしれませんが…
では認知行動療法の具体的な手順に行く前に、まず必ず用意して欲しいものがあります。
それは「逃げ場」です。
電車やバスに乗った際の「次で降りればよい」といった物理的な逃げ場もそうですが、「薬を飲めばいい」「辛ければ帰ればいい」といった心理的な逃げ場も重要になってきます。
こういった病気の知識に乏しい方は「逃げ場なんてあるからダメなんだ」とおっしゃるかもしれませんが、認知行動療法…特に病状がおもわしくない状態では逃げ場のない認知行動療法など病気を悪化させる原因にしかなりません。
具体的には…
■外出全般 … 調子悪ければ帰ればよい、頓服の安定剤を飲めばよい
■電車やバス … 次で降りればよい
■エレベーター … 次で降りればよい
■美容院や理容院 … ちょっとトイレに行ってもいいし、体調不良を理由に帰ってもよい
■レジ … 列から離れればよい
■映画館 … 出ればよい
■車の渋滞 … 高速道路でない限り、最寄の適当な駐車場に入って休めばよい
■歯医者 … 体調不良を理由に診療を中断してもらえばよい
上記はパニック障害を患っている方が口をそろえて言う「逃げ場の無い状況」ですが、本当は逃げ場が無いのではなく「恥をかく」「迷惑をかける」などといった理由で自ら逃げ場を無くしている場合がほとんどで、本当に「逃げ場の無い状況」というのはそうそうありません。
例えばエレベーターに乗っていて閉じ込められた…といった状況は確かに逃げ場はありませんが、極論を言ってしまえば仮にそこでパニック発作が起きたとして、確かに凄い不安と恐怖と辛さを感じるでしょうが人はパニック発作で死にませんし、見ず知らずの方達も看病してくれます。
…確かにこれは乱暴で無責任な物言いかもしれませんが、どんな状況でパニック発作が起きたとしても、結局はどうにかなるという事を忘れないで下さい。
私も子供の頃から社会恐怖症で「予期不安」と「広場恐怖」から散々凄まじい吐き気に襲われ、時に激しくえづいたりしますが、それで死んでしまう事もなければ人生が終わってしまう事もなく、結局はどうにかなるのです。
とはいえパニック発作で辛い思いをすれば、それが記憶に深く刻まれ予期不安と広場恐怖を増大してしまいますから、上記の「結局どうにかなる」というのはあくまでも最終手段…というか、心の奥底で認識しているべき事で、認知行動療法によって行動範囲を広げていく事を考えれば、まず二重、三重の逃げ場を確保しておくべきです。
上で挙げた電車や歯医者などの物理的な逃げ場はもちろん、人によって「飴を舐めれば落ち着く」「ハンカチなどの身近な臭いを嗅ぐと落ち着く」「なにか飲めば楽になる」などの心理的な逃げ場があると思います。
■物理的な逃げ場の確保
■心理的な逃げ場を2、3用意しておく
■持っているのであればデパスやレキソタンなどの坑不安薬と飲み物を用意しておく
これらは特に行動療法で重要になってきますから、病状が優れない初期の段階では必ず複数の「逃げ場」を用意するようにしましょう。
ただし、私が言う「逃げ場」というのは症状を改善するために認知行動療法を行う際の「積極的な逃げ場」であって、最高の逃げ場である自宅に引き篭もっていては絶対に良くなりません。
私は認知行動療法において逃げ場が重要だと感じていますが、一方で過剰な逃げは症状の改善には役に立たない事も覚えておいて下さい。
では次のページで具体的な行動療法の手順などを紹介していきます。
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