社会不安障害(SAD)における認知行動療法

社会不安障害(SAD)の主な治療法は薬物療法と認知行動療法の2つで、前ページの薬物療法に続き、ここでは「認知行動療法」について取り上げていきます。

認知行動療法は「認知療法」と「行動療法」に分けられ、簡単に説明すると、認知療法は物事への考え方や捉え方を変え、不安や緊張を感じないないようにする治療法で、行動療法は「曝露療法」とも呼ばれ、不安や緊張を感じ身体症状が出る状況に繰り返し曝す事により、その場面に慣れていく治療法です。

薬物療法は脳内神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリンなどの過不足により必要以上に感じてしまう不安や緊張を、薬の作用によりセロトニンなどの量を調整し、それら不安を感じにくくするという、いわば身体の異常によって起こる不安や緊張を和らげる治療法なのですが、社会不安障害の多くは脳内神経伝達物質の過不足だけが原因ではありません。

■人付き合いが苦手
■他人の目が気になる
■心配性
■脅迫的な考え方をしてしまう
■内向的
■完璧主義

…など、性格的なものも影響しています。

たまに「社会不安障害に性格は関係ない」といった書籍やサイトを見かけますが、これは半分正しく、半分は間違いです。

もしかしたらこういった書籍やサイトは「社会不安障害はあくまでも病気であり、あなたには問題ないんだよ」と安心させるために「性格は関係ない」といった表現を使うのかもしれませんが、性格…厳密には物事の考え方や捉え方が影響するのは間違いありません。

他人の目を必要以上に気にしたり、過剰に心配性だったり、人付き合いが苦手というのは薬では治せず、それらを改善して不安や緊張を取り除いていくには認知行動療法が必要不可欠なのです。

治療に認知行動療法を積極的に取り入れた場合、取り入れなかった場合に比べ再発が少ないというのはデータでも実証されており、病状を改善し長期にわたって再発しない事を目指すなら、根本的な物事の考え方や捉え方を変え、また苦手な場面に慣れさせる必要があります。

極論を言ってしまえば、私の経験からも薬物療法を用いず、認知行動療法だけで寛解(ほぼ症状が出ず安定している状態)にまで改善でき、逆に薬物療法だけで寛解に持っていくのはなかなか難しいと感じています。

もちろん理想は薬物療法である程度不安や緊張を取り除き、同時進行で認知療法により考え方や捉え方を変えつつ、ある程度積極的に行動する事で、それにより早期の病状改善も望めます。

では次のページから認知行動療法のひとつ、「認知療法」を取り上げていきます。

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